幻獣/仮名
 

彼は幻なので
誰にも見咎められることなく
にんじんを残すことが出来る
街道で裸になったって
警察には叱られない
スカートの中をのぞいたところで
たとえ彼がそれを鼻で笑ったとしても
誰一人として
怒りも戸惑いもしなかった
もはや誰にも迷惑をかけず
ついで
かけられることもない
彼は時折
涙を流す
けれどそれも幻なので
彼自身
自分が泣いていることに気付かない

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