橙火/ミゼット
薄暗い午後、
部屋の中にひとりでいると
不満、不安が沸いてきたので
十糸子のように
オレンジを買い、食べる事にいたします。
服を脱いで、リノリウムの床に座ってオレンジを掴む
ぼんやりとした部屋、その果実だけが全て
オレンジを食べる
皮を剥いて
オレンジを食べる
荒れた喉がしみて痛む
オレンジを食べる
裸のままで、食べる
窓の外でサイレンが鳴った
空に赤いセロファンが見える
私の部屋がかすんでいくばかりで、オレンジだけが世界の全て
オレンジを掴んで
皮を剥いてふさをちぎり噛んで飲み込む
荒れた喉が痛むけれど
種を吐き捨て
裸のまま、オレンジを食べる
不満を、不安を飲み込んで
ただ一本の管になるために
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