白い花に囲まれた寝顔 〜 K 婆ちゃんに捧ぐ 〜/服部 剛
 

棺桶の中で白い花に囲まれて瞳を閉じた K 婆ちゃんは
人生の宿題を全て終えたような安らかな寝顔をしていた

瞳を閉じて両手を合わせた僕は
人生という旅を歩み終えた後
いつの日か遠くで手を振る K 婆ちゃんと
再び握手することを棺桶の中の寝顔に伝えた

小聖堂を出て更衣室で着がえた僕は
食堂に行き、自分で食べることのできないお婆ちゃんの口元に
お粥(かゆ)をスプーンで運んでいた 

老人ホームの玄関の外から
霊柩車の鳴らすお別れのクラクションが聞こえてきた

瞳を閉じると
老人ホームの玄関口は白い光に満ち溢れ
車椅子に乗った K 婆ちゃんは後ろ姿のまま
必死にこちらに手を振っていた 

  

   * 平成十七年・十一月十七日(木)K さん告別式の日に 







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