白い花に囲まれた寝顔 〜 K 婆ちゃんに捧ぐ 〜/服部 剛
 
僕が以前働いていた特養で十三年生活していた
身寄りのない K 婆(ばあ)ちゃんの告別式が老人ホームで行われた日の夜
他施設との懇親会が行われ、
僕は「はじめまして」とテーブルについて
「乾杯!」とグラスを重ね、幸せそうにご馳走をほおばった

向かいの席に座る素朴で明るい笑顔の女の子は
奄美大島から来たそうで、島の話で会話が弾み
ビールで顔を赤らめた僕は
自己紹介代わりに歌う彼女の島唄を
浮(うわ)ついたえびす顔で手拍子打って聞いていた

少し照れた女の子が歌い終えた拍手の渦の後に
奄美で共に働く毛の薄い施設長が

「え〜こう見えても彼女は人妻・子持ちです。
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