fly poet/haniwa
 
詩人というひとは
ふわふわした話をして
霧がかかった町に住んでいて
控えめな音量のジャズバーで
うっすらと赤みがかったフィズばかり飲んで
酔いつぶれるなんてこともなく静かに部屋に帰って
その部屋というのは小高い丘の上にある築100年くらいのがらんとした長屋の一室で
けれどもインテリアにはこだわっていて蛍光灯なんてものは一切なくて
アーロンチェアに腰掛けてしばらくタバコをふかしたあとで
引き出しの中にしまった原稿用紙をしずかにしずかに取り出して
ペンたての代わりのコップの中からよく尖った鉛筆を選び出して
その最初の行に一行だけ書く
もしかしたら一単語だけ書く
ことによったら
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