冬蝉/窪ワタル
午後の輪郭をなぞる
コーヒーの湯気は婀娜っぽい
ブラックはもう飲めない
この頃は結婚式に呼ばれてばかりだから
フレッシュを二つ入注ぐ
深いマグカップに沈み混んで
滑って 昇ってくるのを待つ
寝ぼけた光の欠片
一瞬 蝉の抜け殻の色に似ている
指の腹 形而上的にしか温みはない
砂糖もシロップもなし
憶えたての味 自尊心 ぎりぎり
消さないで
退廃までの距離 無視して啜る
待ち侘びる声も 言葉も
届かないのだ
苦味ばかり舌に絡む
祈りなんて信じていないくせに
身を硬くして丸まっている
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