アヌビスの胎児/The Boys On The Rock
 
命中は決して開かれることはないのだ
(それは冥界の条理でもある)
日々老いを重ねる私
愛児の健やかな成長を遂げる胎児
路地裏の堕胎専門の無資格医院にて
超音波診断器の画面の中
死に水を求めて ぱくぱくと
嬰色の羊水を吸い込むさまは
フライング気味の致死への欲求
時おり 水掻きの残る足が私の胃の腑を蹴り上げ
断末摩の痛みに身を捩りながら
私は唇を噛むだろう
よる年波には勝てぬ と
老母の私に愚痴をこぼさせる山犬の胎児は
宿主を黄泉路に拘引する悍ましい出産の日まで
オシリスの眠りを貪り続けている
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