風邪気味のこころ/炭本 樹宏
 
 遠く離れた異国の風景のように
 今日の僕の住んでる街は趣を変えていた
 僕の心のレンズに映る街路樹は音もたてずに
 ささやきあっている
 夜になって街灯が灯ると目に見えない妖精が
 やはりささやきあっている
 昼間の喧騒からはじきだされて
 君と二人で木枯らし吹く街角から
 暖かい温もりのベッドへ身体を滑り込ませる
 何か起こる予感が枕の上に転がっていて
 僕一人眠りの国に入国できず
 口からのろしをあげて狂気の日々を消し去ろうと
 まぶたの裏に楽園を描く
 のどが渇いてしかたない
 睡眠薬を飲んでも次から次へと
 フラッシュバックする過去の過ち
 風邪気味のこころは明日がどちらに向かうのか分からず
 風見鶏がくるくる回るように僕は惑わされてるだけ

 あぁ 寒いの嫌や 寒いの嫌や

 人工の温もりではこころの風邪は治らない
 人肌恋しいこの季節
 再び君の眠るベッドへもぐり込もう

 北窓の僕の部屋に春が訪れるのはずっとずっと先になるだろう



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