黄金虫/ミゼット
赤いランプの吊り下がる
あらゆる街の角に這いつくばり
わたしたちは歌を待つ
それは煉瓦の隙間から流れくるものであり
それは男の外套から聞こえるものであり
わたしたちは何も知らない
赤ランプが溶け出し
夜が過ぎていく
歌が聞こえないかと彼女が言うが
やけに光が明滅して何も聞こえない
それは泥水の中にあり
それは痩せこけた母が隠し
わたしの手のひらや彼女の右足に宿り
わたしたちを路上へと縛りつけるもの
わたしたちは歌を待つふりをして
這いつくばり腕をのばし互いの身体を繋ぐ
光が明滅するまま
ちぎれ、かすみ、崩れ、こぼれる
ランプは溶けて
もうすぐ夜が明ける
けれど
わたしたちはまだ、何も知らない
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