夜警/MOJO
 
 日が沈みかけたので金庫の現金を数え、出納帳に記した。数十円の誤差は、自分の財布から補填し帳尻を合わせた。電気、空調のスイッチをオフにし、扉に施錠しエレベーターのボタンを押す。エレベーターはがらんがらんと音をさせながら私のいるフロアまで昇ってきた。一階に降りるまで、まだ仕事をしている同僚が乗ってくることはなかった。
 晩飯は会社から最寄の駅までの道沿いにある蕎麦屋で済ませることにした。この時間になれば、かつては毎晩のように上司や同僚と酒を酌み交わしたものだ。学生のころは、居酒屋の隣のテーブルで熱く語る背広姿の者たちを嫌悪したものだが、自分が背広を着てみると、会社帰りの居酒屋でするのは、やはり仕事
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