裸の女/服部 剛
 

焦点の合わない老婆の瞳は見ている

自分の体を拭く二人の男と
その間にいる
白い光の服を身に纏(まと)う幻の人影を

もう動くことの無い老婆の手に
幻の人影の手が そっと触れる

焦点の合わない瞳から 痩(や)せこけた頬に 一滴(ひとしずく)の涙が流れる



     
     * 自家版詩集「明け方の碧(あお)」(01年)より  







戻る   Point(11)