連輪の蛇/木立 悟
 


林のなかのどこからか降る
ぼやけた影の重なりが
手首にふたつ震えている
青と緑の輪はまわる
音は少女の手にむずがゆく
降りつづける影をゆらす
鱗の血が
花の血が
笑みのなかに目覚める


見つめあう笑み
はじめからそうであったかのような
たがいの笑み
枯葉に 雪に
咲く両手
舞うもののまわりを舞う光


言葉ではないものが言葉になり
言葉が 言葉ではないものになり
少女のまわりをまわりつづけ
やがて一匹の白い蛇になり
次々と連なりひらく輪のように
首に光り
頬に光り
頭上の見えない冠に微笑む
言葉の雪のように
常に生まれた
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