太陽みたいな/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
取ると、力いっぱいコルク抜きをワインのコルクにねじりこみ、頃合を見計らったところで勢いよく引っ張った。コルクはぽぽん、と気持ちいいほど音を立てて抜けた。用済みになったコルク抜きをその辺に放り出し、ワインの中身を、瓶を振り回しながらぶちまけた。彼女はもう、狂人を見るような眼で顔色を伺う。行きがかり上、無視する他にやることはなかった。
 ワインの瓶を空っぽにした後放り投げ、請求書は後で送ってね、と言い残すと、彼女の家を後にした。もう電話は、かかってこないだろう。いつまでも尾を引くのはいやだった。



 帰り道、都電の姿が見える。好きな、古い形の車両だった。あいかわらずちんちんと、鈴のようなものを鳴らして走っている。
 暴れすぎて疲れた体で、通り過ぎる車両をぼうっと見送るうち、なんだか歌が唄いたくなってきた。


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