太陽みたいな/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
都営三田線巣鴨駅から十数分歩いて滝野川に近い庚申塚の駅に行き、そこから巣鴨新田寄りに都電の線路沿いをいくと彼女の部屋があった。本当はもっと早く行ける道があるのだが、都電──それも、リニューアルされていない、昭和の頃につくられたような車両──の走っている姿を見るのが好きで、いつもこのルートを辿るのだ。古い都電がちんちんと、鈴のようなものを軽く鳴らしながら走る姿をみるたび、いつも、何かが救われていくような気がする。
彼女の部屋は80年代あたりに流行ったようなコーポタイプのアパートで、2階の一番奥の方にある。周りは築数十年経つような蔦や葛が壁一面にびっしりと這いまわっている感のある高湿度きわまりな
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