声/
松本 涼
雨上がりの朝の三田口広場でタバコを吸いながら
羽を膨らませて丸々と太った鳩たちを眺めていた
まるで歩きたての幼子のような足取りで
それぞれがそれぞれの方向へと急いでいる
僕は声を手繰るように
鳩たちの意識に耳を傾けた
けれどやはり鳩たちは何も語るはずもなく
荒んだ色の地面の上を行ったり来たりしているだけだった
むっくりとしたその羽の中で一体何が
起きているのだろう
湿気に満ちた時間の上で
僕は重たく膨らんだ
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