枯葉の散る頃/服部 剛
 
で涙を拭(ぬぐ)っていた老婆は
片腕で車椅子をこぎ続け
ひとすじの長い廊下をゆっくりと進んでいた

芝生の庭へ出た僕は
木陰のベンチに腰掛けて
見上げれば真っ青な秋空に身を躍らせる無数の枯葉
風に揺られて一枚 枝を離れ足元に落ちてきた

老人ホームの窓の内側から
青年の介護職員が老婆と楽しげに手拍子を打ち
歌っているのを聞きながら
僕は木陰のベンチでうたた寝る



     * 夏川りみ(歌手)「涙(なだ)そうそう」より引用 




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