枯葉の散る頃/
服部 剛
で涙を拭(ぬぐ)っていた老婆は
片腕で車椅子をこぎ続け
ひとすじの長い廊下をゆっくりと進んでいた
芝生の庭へ出た僕は
木陰のベンチに腰掛けて
見上げれば真っ青な秋空に身を躍らせる無数の枯葉
風に揺られて一枚 枝を離れ足元に落ちてきた
老人ホームの窓の内側から
青年の介護職員が老婆と楽しげに手拍子を打ち
歌っているのを聞きながら
僕は木陰のベンチでうたた寝る
* 夏川りみ(歌手)「涙(なだ)そうそう」より引用
戻る
編
削
Point
(11)