一枚の葉に浮かぶ顔/服部 剛
 
暗闇に咲く白い花は風に散り 蝶(ちょう)の羽となり

  ゆるやかに宙を舞い

残された葉の一枚も一本の細い茎を離れ

  ひらひらと

豪雨の過ぎた激しい川の流れに飲み込まれてゆく

無力な者は抗(あらが)いを知らず
何処へ流されてゆくのだろう

暗い洞窟(どうくつ)の中で独り
瞳を閉じて明日の死を待つ男の額に滲む

  血の 汗の 滴 

自分を裏切る者さえも許す
犠牲を愛と呼ぶならば
暗闇に光は射すのだろうか

明日、男は重い十字架を背負い
民衆に嘲(あざけ)られながらよたついた足どりで
ゴルゴダの丘へと上(のぼ)
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