顕現の人 〜マザー・テレサの瞳に映る病者の内に〜/服部 剛
 
きりすとが赤くきれいに咲いている
きりすとが青々と茂っている
一本の樹齢二千年の木のように
立っているきりすとは
大きな丸い世界を蒼(あお)く包む空にとけゆき
無限の宇宙へと広がりゆく

背中丸めて杖をつく老人は彼の化身
飢えた渇きに死に逝く老人も彼の化身

あなたを愛する人の奥にも
あなたを傷つける人の奥にも
人智を超えた彼は潜(ひそ)んでいる

およそ二千年前に
肉体という殻(から)を脱いだ彼は
時間と空間の法則を超えて
 
  ここにも そこにも
  どこにも おられる

書いている私と
読んでいるあなたの間にも

彼はこの世を去る最後の時
「私は渇いている」 と言った

今日一日
私とあなたが出会う隣人の奥から
その声が聞こえてくるだろうか

 そっと耳をすまそう
 じっと目をこらそう

何をすればよいか わかってくる 



 *この詩は ’00年にマザーテレサに影響を受けて書いた詩です。 


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