暑い日の午後は猫につきあうのも悪くない/野島せりか
 
猫がまどろんでいる
暑い日差しがつくる木陰の下
遠くで遊ぶ子供達の声に
耳だけぴくぴくさせている
暑い日の午後は猫につきあうのも悪くない

つながれることもなく
餌を貰うときだけ媚びる自由な猫を
隣の犬はくさりにつながれたまま
変わる事のない場所から見てた

―梅雨明け前なのに暑いね―
庭を手入れする大家が明るく言った

猫ときたら無理な姿勢で毛を舐めている
毛繕いのことしか今は頭にないのか
目を細めて舐め続けている
快楽だけを求めて

暑い日の午後は猫に付き合うのも悪くない
猫は居心地のイイ場所を知っている
すぐに見付かるなんていいね

夜になって
猫がいなくなってもその場所だけはあたたまっている
いつまでも ここが俺の場所だよって


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