主体/あおば
古びた待合室に西日が射して
喉が乾いてやりきれない
安物の扇風機、ぶんぶんと回転し
僅かな逃げ場を隙間なく切断して
夏を愉しんでいる
診察を待つわたしたちの空気は
ついに白い粘液に変様し
柔らかい褐色の固体となった
生き物のように身を縮め
蠢いているのをふんづかまえて
べたっと壁に投げつけたら
しばらくの間ぴったりと
付着していたが
ずり落ちた
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初出 2000/06/25「徒手空拳詩人の会」
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