井戸/あおば
 
            
なにもないところから
水を汲み出す作業は
大変きついことです

今日も草臥れたあたまと
身体で
井戸の縁から
底を覗き込んで
あまりの深さに
ため息をついてしまった

白く光る丸い空に
すべてが収斂してしまって
ものうげに
水面が揺れ動いているのが見える

空中にあるものが落ちて
みずにしばらく浮いて漂う
軽いゴミみたいな
粉みたいなものが
その位置をかろうじて維持している



----------------------------
作1979年5月17日
戻る   Point(3)