ずぶ濡れ/炭本 樹宏
 
 
 などろむ午後
 なまぬるい雨に打たれて
 心模様もしめりがち

 そう 
 僕はひとりじゃ
 生きていけない
 それを責められる

 弱さを隠しきれなくて
 身体から悲しみがこぼれて
 誰かに頼りたくて
 でも頼れなくて

 一人で生きて行く力を
 手に入れたくて
 数少ない友達にも
 電話しないで
 ひたすら自分と向き合う

 まず 一人で
 あの鳥達のように
 空にむかって
 飛び立とう
 
 この狭い世界の
 一角で
 息をひそめて
 ずぶ濡れになっちゃえ

 ちょっとぐらい
 やけくそになってもいいだろう
 そして 雲の上まで飛んじゃうんだ
 今の自分じゃ飛べないと思うけど

 よりどりみどりの
 未来は 手に届かないけど
 せめて 雨色の思い出は
 手に入れる




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