秋の呼び声/服部 剛
高く澄んだ青空の下
広い芝生の上
この細腕には少し重いベンチを
歯を食いしばり運んでいた
色とりどりの枯葉が無数に敷かれた
穏かな秋の陽射しに影を伸ばす
あの木陰(こかげ)まで
十歩運んではベンチを降ろし
真(ま)っ青(さお)な空を仰いでひと息ついては
再びベンチを持ち上げ歩き出す
(数十分後には
(木陰に輪をつくる何人ものお年寄りは口をそろえて
(皆で「赤とんぼ」を唄うだろう
(皺(しわ)の入った両手の器に盛られた枯葉を
(にこやかに老婆が放り投げれば
(輪の真ん中で虫取り網(あみ)を手にした僕は
(必死に這って舞い散
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