孤狸庵先生の面影を探しに 〜‘04 8月 Poete on the Road 旅行記より〜/服部 剛
僕は今夜鎌倉に帰るから美味(うま)いもんでも食べない?」
「う〜ん、今日は友達といるから。」
「そっか、都合悪いね・・・
それじゃあまた。Iさんも旅を楽しんで!」
僕は受話器を置いた。食事に誘いながらも、昨夜顔を
合わせたイベント後に、Iさんが他の男と街に消えてい
った場面が頭によぎったので、無理を言ってまで会いた
いとは思わなかったが、後悔を残して鎌倉に帰るのは嫌
だったので、電話だけはしてみた。
とぼとぼと坂道を下る僕は見上げた青空にうっすらと
浮かんだ敬愛する遠藤周作先生の微笑みに向かって、
「狐狸庵先生、やっぱり僕は、ふられちゃったかなぁ?」
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