誰でもどこでもない君/たちばなまこと
秋の夕暮れを過ぎて
白熱灯のオレンジたちが 時間にいかりをおろした
らせんにおちてゆく綿毛の夜
雑踏の生きたたましいを ちょっとぬすんで
二の腕や首すじを やわらかくかすめる
ワトソン紙ににじむ絵の具のみたいに
道を開く路地裏
カップをなぞる君の指
女の子みたい
普通の男の子に生まれたかったって
フルーツケーキをつつく
結婚もさ 一度ぐらいはしたいけどさ
二度目の私にかかったもやを 吹き払う声
熱帯魚と泳ぐ小さな島から
スケッチブックくわえて 青い鳥になって
自分と同じ色の 新しい家を探す
誰とも結ばれないままに
見つからない 新しい家
見つからない 新しい帽子
女の子サイズの古い帽子を 私の頭にかぶせて
違和感ないじゃんって
女の子でも男の子でもどこでもない路地裏から
幸せをうたうたばこの煙が
金色の月に手を伸ばす
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タイトルは、ある詩人から拝借。
ラッキーストライクのたばこが、大好きな君。
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