因数分解中毒者のために/小林レント讃2/渡邉建志
蝶の存在
木を叩く
僕が眠るわずかな時間に
平和な街
蝶の存在、なんていう題名だろう。うまくいえないのがもどかしいんだけど、たとえば「何々の存在」という言葉を、普段使うことがない。「解の存在」とか「容疑者の存在」とか、ちょっと特殊な場面でしか使わない。哲学や科学が入る。「存在」は「存在する」という動詞的な意味をふくむ名詞だから、ここでは「蝶が存在すること」という意味を頭に擦り付ける。頭の中心に蝶が一匹存在させられてしまう。なんというか、スワロウテイルのCharaの刺青とか、あれは「蝶の存在」って感じがする。この詩はまた違うのだけれど、存在という言葉の強度は強い。
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