憂鬱な日々/竹節一二三
夕方に靴を履く
もちろん 新しい靴ではなくて
ここ三年で履きつぶした夏のもの
そらは虹めいて輝き
不安を風に運ぶ
自転車に乗ると
全て受け止めることになるから
わたしはひとり 川まで歩く
お弁当を買えば
爪楊枝が悪意を持っておそいかかり
ドレッシングは野菜にかからず
わたしを狙う
なんて憂鬱な夕方
稜線が輝いて
夜の足音が聞こえ始める
半熟卵のような太陽が沈んでしまえば
空は月のものになる
期限切れの食パンをなげても
魚は寄ってこない
なぜならここは 死んだ川だから
「ごみをすてるな」の看板ににらみつけられたから
逃げるようにその場を離れた
なんて、憂鬱な世界
ひとつの風が
ふうっと静けさを運んできた
世界の始まりみたいな
緑の匂いが聞こえる
憂鬱な日々のわたしをぬぎすてて
出来るかぎり早く明日を駆け抜けよう
憂鬱を忘れて
退屈な日々を捨てて
行方不明のわたしになろう
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