弥生・三月・夢見月 ー北鎌倉・東慶寺にてー /服部 剛
 
が下りた境内の小梅等は
ためらいがちに下を向き
伸びゆく石畳の道の向こう 
 

 山々の上

 丸く 真白い 月

 横切る雲

 風に震える枝 

 運ばれる梅の薫り


感覚の眼に映る
一つの宇宙

夜の息吹に頬を撫でられた 
恍惚の青年

背後に眠る暗緑の林では
文人達の墓石が
青光の羽に姿を変えて 
蝋燭(ろうそく)の炎のゆらぎで
闇夜に明かりを灯していた 







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