醤油/たもつ
 

二十数年前
大量の醤油を飲んで自らの命を絶った科学者がいる
それが私の父だ
いったいどれくらいの醤油を飲んだのか
警官が説明しようとすると
母はそれを遮り
私の手を引いて長い廊下を歩き始めた
その手の力を今でも覚えている


+


夜の海は しょうゆ色
しょうゆの なみが立ち
しょうゆの 風がふく
月だけが見えないのはなぜ

私が小学生の時に書いた詩だ
あら、海が醤油なの、先生はクスリと笑った
先生、違うんだ、これは悲しい詩なんだ
そんなこと、言えなかった


+


今朝は醤油差しの調子が悪く
何かが詰まっているみたいに
ポトリポト
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