虚無の野の男 〜 奥津強に/The Boys On The Rock
Tokyo Poeket 2005 江戸東京博物館にて
浅黒い肌
伏せ目勝ちに世界を伺い
情熱は 太い腕の中を空回りしている様子
遠くからも
痛々しい触感が伝わる
黒人と木乃伊マニアと地蔵の首を
アイテムとした虚無の野の住人は
喉を乾きに耐えかねて
黄泉路の地平を犬のようにひた走る
父よ 父よ
失われた天上の父性に
永遠の距離で決別した彼は
エデンとノドの境に
埃まみれの道祖神を建立する
五百塵点劫のやさしい過去生の記憶を思い出しながらも
峻厳な父の殴打によって刻まれた
つみびとの印が今も痛みを忘れない
たとえ 夏の日差しや早春の風に癒されたとしても
その痛みが止むことは永遠に無いのだ
複雑骨折した情熱を
浅黒い肌に閉じ込めてから
長い長い贖罪の時を
過ごしてきた彼の瞳には
とうに 一神教の救済の言葉は届ず
野良犬の舌を持って
自涜を行うしかないのだ
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