明日からやって来ました/服部聖一
空を泳ぐ鳥たちでさえ
死はいつも地上のある
明るすぎる地下に雨は降らない
きのうの洗濯物を今日の朝日に干す
明日は雨らしい
シャツには見覚えのない涙の跡がついている
毎日クスリを飲みつづける犬が
枕元で懸命に手足を動かしている
今日もつらい夢を見ているのだろう
力の入った かたい背中をなでる なでる
24時を地下ですぎる
雨は降らない
ぬれた傘からコンクリートの床にしずくが垂れる
飛ぶ鳥の影が 頭上を一瞬すぎる
明日の日付がめまいする
はるかにつづく地下のトンネルを
くぐりぬけ
地下鉄でくぐりぬけ
くぐりぬけ
傘をくるくる回し
うたた寝をして
地上に出ると
雨と土のにおいがした
戻る 編 削 Point(6)