ニッポム/服部聖一
夜の空の色は 全くの黒ではない
東京の空の色も 大阪の空の色も
いつの世も空の色は 深い深いこん色である
青を塗りかさね 塗りかさね
うすめれば空に近いこん色である
その証しに 明け方の空はとどまることを知らない
一日のうちでいちばん新しい空気だ
茜は空の色の名前ではない 人の名前である
長野のキャベツ畑の葉に朝露がたまり
もやけた空気にとがった光がさしてくる７月
くるくると回転しながら朝顔が空をめざす
ほどくように花がひらく
碧は葉の色の名前ではない 人の名前である
にやけた名前も空の色もニッポムの呼び名で
塗りかさね 塗りかさねられても
まったくひとつの黒でなんかない
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