満ち潮/たちばなまこと
呼んでる
わたしは はんぶんだけの さいぼうだけれど
くらくて とくんとうごく かべのへや
まってる
淋しいと 引っ込むみたい
雨が浸みると 歩くのいやいやって するみたい
満ち潮
呼んでる
今度は私が呼んでる
指にキスしたいんだ
おいで
からだの住人が記憶している 海の話でも 聞きながら
少し待ってて
私のおでこの奥で 桃が熟したら
あなたにもあげる
からだの住人がうたってる 海のうたって なあに
さかなだったころなんて ほんとうにあるのかな
感じて欲しいんだ
大きくなる前 あなただけの海があって
目をぎゅっとつむったまま 泳ぐからなんだと
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