炎症の海/jei
 



行き交う人の笑顔が溶ける
やわらかい世界

かたい俺をはじく。
あの日ウンザリしたきみの泣き顔だけが
今の俺を支えるほどに。
少なくとも俺はあの日
必要とされたから

平和でドロドロに溶けた
ビルディングのかど、街
ゼラチン質の世界。
俺は「形」を求めて
ペルソナが敷きつめられた道を行く
やがて世界の額縁に腰かける。
四角に閉じ込められた世界
は、すぐさま液状化
その混沌スープに
両足を入れる、浸してみる

きみのあの日の泣き顔が
封じられた仕組みを
突然、はじいて
全神経が
俺の毛穴からスープの中に
すべり落ちる、溶け出す
とたん
今さらの、炎症の海になる






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