夢見た。/あさみ
 
踏。
 雑踏の静寂に、思わずぶるっと身震いをした。


「なにしてるの?」


 驚いて視線をやると、声の主は隣の街灯の上で無邪気に笑っていた

 幼い子供
 性別の区別もつけられない。髪の毛も生えそろっていない
 まだ 赤ん坊

 声も出せずに見つめていると、
 彼(彼女)は、無邪気に笑い声をあげ、足をばたつかせた。


「なにを しているの?」


 誰に問うたのだろうか
 雑踏の中に潜む冷たさが、私を再び捕らえにきた。


「…なにを」


 瞬間の出来事だった。
 私が、彼(彼女)に、震えた声をかけかけた瞬間


 彼(彼女)は、無邪気な笑い声をあげ
 その、小さくて柔らかそうな手で、自らが座っていた街頭を
 力強く 押した

 わずかに持ち上がる小さな体。
 しんしんと降り続ける雪と共に
 彼(彼女)は満足げな笑顔で 落ちていった。
 ばいばい。私に手を振って。




 遠ざかっていた雑踏がゆっくりと戻ってきて
 私は ベッドの中で目を覚ました。
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