月夜のピエロ/服部 剛
 
の中に聞いている

膝(ひざ)の破れかけたジーンズと
ほころびたTシャツに着替えて
ふらりと立ち寄った月夜の公園
寄り添うように立つ明かりの下
独(ひと)りベンチに腰掛けるピエロ 

数時間前客席に肩を並べていた
無数の笑顔の面影を
月の光の降りそそぐ両手の器(うつわ)に浮かべている

やがて誰の手にも触れ得ぬピエロの胸の空洞に
秋の静かな風は吹き抜ける

寂しさに震える両手に掴(つか)み得ぬ
幸せを 何処かに 運んでゆくように
月夜の風は吹き抜ける 












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