どこにでもある話 2/いとう
」とは使い古された言葉だが
彼に向けられた彼女の愛情はまさしく
視覚障害者が杖もなしに高速道路を横断するほど危なっかしいもので
それは彼女に言わせれば
「初恋の気持ちを思い出させてくれた」
ものとなるらしい
たとえ純粋な感情に昇華されたとしても
あまり何も考えない性格は変わるはずもなく
これでは当然横断できるわけがない
高速道路に横断歩道はないのだ
彼はケータイ2つとベル1つしか持っていない
ケータイは仕事用とプライベート用で
どうでもいい女にはベルの番号を教える
デート中に他の女からTELがかかってこないようにするにはこれで充分で
もっと持ってる奴は効率が悪いだけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)