蝉/
 



蝉が鳴く
じじじ、じじじと

幼いころ
容赦なく照りつける太陽のもとで見たのは
死を甘受して道端に仰向けになった蝉たちだった
彼らはまるで小石のようにただ転がっていて

大人はそんな彼らを見向きもしなかったし
そしてこどもは命の重みを知らなかった


蝉が鳴く
じじじ、じじじと
かき集めた生に死という火を灯して
眠っていた時間を取り戻すかのように

今ならわかる
彼らは死を甘受していたのではなかった
彼らはヒトよりも生きるということを理解していたのだと



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