音のない朝/八月のさかな
色のない朝に目を覚まし
音のない世界におはようをいう
返事がかえってくるのもまたずに
わたしはせっけんをあわだてる
すずめとくるまに声を与え
カーテンと食卓に色をつけた
なにも書かれていない新聞を読みながら
喋らないラジオに耳を傾ける
味のしないトーストを頬張って
湯気の立たないコーヒーをすする
マニキュアの欠けにふと気付いて
しんぞうの空気をすこし抜く
なんてことのない朝
どってことのない世界
もうすこしだけ夢みたい
だけどわたしはねむれない
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