ぼくのぬけがら/服部 剛
誰かさんに怒られると
すぐに浮かぶのは言い訳ばかり
のどの奥に ぐっ と飲み込む
( 夏の窓辺には蝉のぬけがらが置かれていた )
ぼくの至(いた)らなさで
誰かさんの表情を曇らせてしまったから
ぼくに向けられた嘆(なげ)きの言葉を
そのまま胸に受けとめると
誰かさんが今までに
困った顔したぼくの見えないところで
何度も助けてくれた姿が浮かんできた
ぼくを怒った誰かさんをありがたく思い
ふわりと歩き始めた背後には
うすい影となり いつまでも立っている
ぼくのぬけがら
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