海/八月のさかな
 
波のたたない海があった
永遠に穏やかな海だった

太陽は常にやさしくそそぎ
白い砂浜はしずかに乾き
水平線はかつて乱れることなく
つねに微笑みかける海があった

ひとびとは海を愛して
海はただそこにあった
夜には去ってゆくひとびとを
毎朝しずかに受け入れた

わたしは砂浜で眠る
聞こえないはずの波の音が
泣き声のように耳元を濡らす

目を開けて海をみると
やはりただ青く、しずかに
海はそこにあって

かなしくてわたしも泣いた

海はきょうも
ただそこにある

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