拝の木/チQ
 
春と言えど北国の風は冷たく
歩みを増やすほどそれは突き刺さった
その代わり
見上げた空は藍黒く澄みきって星の瞬きがはっきり
だのに月だけぼんやりとして八分の五
顔を出していた

片手支配され親指踊らせる白灯りの下
枝分かれする影を踏み碧い目が赤く昇った
そしてまた碧い光灯れば右から車
アスファルトに横たわる梯子の前に待ったまま
人の字が足を入れ代わりスライドするのを見ていた

橋に近付くと
今度は左に地蔵様
九十度転回
手を合わせ
父方と母方 両方の祖先を想う
故に守られている
という事を知っている

メールの返事が今頃来た

敢えて返事は明日にしよう
鉄塔を見上げそう思う
この道
左に曲がり
『拝』の字から手偏を取った形の木が
あった
拝むのに手は要らぬ
と言われているような気がした

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