「夢のひととき」/服部 剛
 
弱い白い手と握手を交わし
レストランを出て行く君の
笑顔の残像だけをTシャツの胸ポケットにしまい
ついさっきまで僕等が座っていた窓辺のテーブルをみつめると
空になったふたつのグラスだけが並んで窓の外を眺めていた

店内の薄茶けた壁に掛けられたモノクロ写真には
オードリーヘップバーンがはにかみ
ソニーロリンズはサックスを抱いて
寂しさを追い払うように背をしならせ
金色に開いた口は言葉にならぬメロディーを叫んでいた

音の無いメロディーに耳を澄ました僕は
ついさっきよりも丸まった猫背を
少し伸ばした 



















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