「夢のひととき」/服部 剛
 
三階のレストランの窓から見下ろした
木造の橋の向こうへ伸びる石畳の道をゆく
白い服を着た君の背中はだんだんと小さくなり
緑の木々の下に消えた

立ち尽くす僕は
次いつ会えるかもわからない
遠い町に住む君の幸せを一心に祈った

 せつないなんていわないよ

 さびしいなんていわないよ

 きっと いつか また あえるから

ピザやパスタを挟んで向き合っていた君の
左手の薬指にはすでに銀の指輪が細く光っていたが
僕はこんなことを話した

「 人生は夢だよ
  どうせ夢ならいい夢を見たいから
  今まで出逢ってきたひとりひとりの面影を
  独りきりの夜の闇に浮
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