咲き枯れて標本になり/紫音
 


ワイングラスに揺らぐ血の波紋に
投げかける白
吐息を混ぜて作るカクテルに
筆先を浸して黒
指先がつたう背に残る
退化した翼

展望台から眺める十字路に
立ち竦む灰猫
星屑を塗して飾る鏡面に
映る瞳の青
鼻先で感じる空の色に
届かない虹

(夜の一人の明日の二人の昨日の無人の言葉たち)

吹き付ける砂丘の嵐
黄色に染まる世界
目を閉じた痛みの感覚を
投げつける先に広がる沁み

この鉱物は何?
この生物は何?
類型化し体系化し
樹形図のように当て込まれる
価値と意味と存在
もしくは意識

(合う合わない会う会わない毟られる花弁たち)

落ち着かない心地を慰めるために
形に合わせ余分を捨て
肺の奥の気泡のように
血の中の脳漿のように
物語に織り込まれる
言葉たち

神話の幻想のなかで殺される

言葉たち

相対化され位相を与えられる

ことばたち

コトバたち

(嗚呼、今日も夜の帳に呑み込まれ融けている)


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