川岸/あおば
 

青い空に白い雲
やわらかく反射して
川面を流れる春の景色を
岸辺に座って見ていた。

空は見上げなくてもいつまでもそこにあると思うのだけど、
気がつかないうちにすぐに流れていってしまい、
もうひとつの雲が来るのをはらはらしながら待っている。

笑っているのもいる。
怒っているのや泣いている雲は
川面の空には映らないから
流れていくのはなんなのだろう。

ぼくたちはずっとここにすわっているので、
なにもかわらないと思うのだが、
だんだん川に来る機会も少なくなり
ほとんど忘れてしまった。

おおきな蜂蜜の瓶を抱えたまま
水の枯れた小川に落ちて
酷い目にあったことだけは覚えている
もうひとつの記憶は鮮明だけど
やわらかな春の景色の中にはなくて
そのもののなかに封じ込めてある。









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作2001/01/18

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