牛丼屋にて/服部 剛
仕事を教え
細身のおばちゃん店長はてきぱきと
お客さんに牛丼を運んでいる隙間に
ちらっと優しいまなざしで
厨房の二人に目をやる
細身のおばちゃんを中心に
声をかけ合いながら働く三人を見ていると
うっすら湯気を昇らせて運ばれてきた牛丼は
なぜかいつもより美味しくなった
丼を空にして
「ごあいそうお願いします」
と席を立ち
細身のおばちゃんに
( この店はいい雰囲気ですね )
とは恥ずかしくて言えなかった言葉の代わりに
「美味しかったです、ごちそうさま」
と言い残し
「ありがとうございました!」
という細身のおばちゃん
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)