泳げない八月十六日 (即興)/窪ワタル
散乱する格子らに
畏まって居られないらしく
文字達が泳いでいる
水族館にしては蒸し暑いし
少しも苦しくない
もともと肺呼吸がとくいじゃなかったんだからいいか
と独りの部屋
触れてしまえないものになれないで
胃袋で蛆が涌く
いっそ食い破ってくれるならそれで本望
さっき送って行ったばかりだから
まだそんなに遠くじゃないよね かあさん
線香の煙に乗るってどんなだろう
もぐるのに似てる?
運命の子は 八月になると
背負いきれない袋があるとわかるようで
拳を握り
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