静寂からの呼び声 〜’02年 8月15日・終戦記念日〜/服部 剛
じると
過去へ吸い込まれるように消え・・・
真夜中の道の向こうから
隊列を組み行進する兵士達の
規則正しい足音が迫って来る
「君には・・・命が・・・あるじゃないか・・・」
かつて戦地に散った無数の魂の祈りは
行進の足音と共に繰り返され
遠き戦慄の日々から吹いてくる真夏の風に
木々の葉は揺れる
日常の些細な出来事で悩んでいた
戦争を知らない僕の胸の内に
たった一つの命はあふれ波立つ
両手を合わせ
背負いきれない沈黙の声を背後に
「東京都民戦没者・慰霊の地」を後にする
公園には夏休みの子供達
ひたむきに頂上を目指しジャングルジムを上っては
声をあげて滑り台を下っている
父と子が幸せそうにキャッチボールをしている
ベンチに腰掛けて子供達のはしゃぎ声を聞いている
盲目の老人は じっと いつまでも みつめている
木々の葉が茂る向こうの青空の中へ飛翔し
翼を広げて消えてゆく一羽の白い鳩(はと)を
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