よらよら綴り 声の鳴りかた/エズミ
 
音に関しては鈍いたちだが、ふとした拍子に、頭を掠めることがある。

普段の雑事をこなしているときや、ひとりでしずかにしているときも、常に頭の中は言葉が囁きほどの音量で反響している。
でもそれは、耳で聞く響きではない。誰かとの会話を思い起こすときは、相手と自分の声を耳で聞く音として再生する。
考えているとき、黙読するときの声は音がない。でも、鳴っている。
ことばが、思考をかたどっている。
とはいうものの、情緒の靄を言いあぐねているときや、、目の前の天啓を掴み損ねるのを懼れるような理解の震えを感じているときなど、つい、手近にあった単語を口に放り込み、噛みつぶして雑多な音の谺になる。ものの輪
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